豊麗な響き、圧倒的なエネルギー!!
        野平と渡邉、二人の巨匠が拓く松村ワールド

 今回オーケストラ・ニッポニカが焦点をあてるのは作曲家・松村禎三だ。松村が作曲した管弦楽曲は小品を加えても、その数わずかに14曲。加えて主要作品は楽器編成が大きいこともあってか、演奏される機会は希である。ただし、松村の作品への評価は高い。例えば、雑誌「音楽芸術」が13名の評論家から採ったアンケート「1960年代の優秀作品」によれば、ベスト3は四票同点で、松村禎三『交響曲第1番』(1965)、武満徹『ノヴェンバー・ステップス』(1967)、三善晃『交響三章』(1960)であった。
 松村の『交響曲第1番』について、鬼才と呼ばれた作曲家・八村義夫は次のように述べている。「一口にいえば血湧き肉躍る音楽だ。そして幸福になった。音響は轟々としているが常に美しい。豊麗さの点では、日本人の作品としてはほとんど類例がない。」そして、世界的指揮者であるワレリー・ゲルギエフも、松村を敬愛しているひとりだ。
 このような評価を得ている松村禎三作品の"実演"を聴き逃してはならない。紀尾井ホールが誇る素晴しい響きによって、彼の作品を楽しんでいただきたい。
 指揮者は、現代日本を代表する作曲家のひとりで、ピアニストとしても著名な野平一郎。野平は松村と交流があり、且つ2007年には下野竜也指揮・東京都交響楽団と共演して超難曲の松村禎三『ピアノ協奏曲第1番』を演奏している。今回の独奏ピアニストは、野平が推挙した渡邉康雄である。渡邉も松村と交流があり彼の『巡礼T,U,V』を初演している。また近年、リサイタルや協奏曲の弾き振りなどで素晴しい音楽的円熟を遂げている渡邉は、作曲を矢代秋雄、野田暉行らに師事して作品を遺している。
 松村禎三との縁あるふたりの音楽家とオーケストラ・ニッポニカの演奏会にご期待ください。