「日本近代音楽館」へのオマージュ
オーケストラ・ニッポニカ 奥平 一

 オーケストラ・ニッポニカは、7年前、「芥川也寸志メモリアル」の冠を付けて創設されました。その冠は、作曲家・芥川也寸志が1976年に始めた、日本作曲界の先達の管弦楽作品を発掘して演奏する“運動”の一端を引継ぐ、という意思の表明に他なりません。

 長い間演奏されることのなかった日本人作品を掘り起こしてきたニッポニカの7年間の活動を振り返れば、蘇演した日本人作品86曲、演奏会で今後も実演できるよう楽譜を作成した作品20曲、新作委嘱7曲にのぼります。さらに、これらの演奏をもとに制作・発売されたCDは6タイトル、海外での音楽祭開催2回、などの実績を積み重ねてまいりました。

 これらのニッポニカの活動は、明治以降に作曲された日本人作品の自筆楽譜・録音資料をはじめとする膨大なコレクションを所蔵して研究・調査を行う日本近代音楽館(東京都港区、遠山一行館長)のご協力がなければ、到底なしえないものでした。昨年、その日本近代音楽館が2010年3月をもって閉館、50万点に及ぶ所蔵資料が同年夏に明治学院大学付属図書館へ寄贈されることが発表されました。

 私どもオーケストラ・ニッポニカは、これまでの日本近代音楽館の業績がいかにかけがえのないものであるか訴え、貴重な音楽資料の継承活動に対して社会的啓蒙を図る意思を強く表明するものとして、第18回演奏会を開催することと致しました。

 曲目は、日本近代音楽館が発掘してオーケストラ・ニッポニカが蘇演した、深井史郎(1907-1959)による大規模なカンタータを含む2つの優れた管弦楽作品、および伊福部昭(1914-2006)の作品をとりあげます。この伊福部作品は、日本近代音楽館へ自筆楽譜等資料を収める際の調査発掘の過程で作曲家自宅から発見されたものです。

 さらにこの演奏会を、日本の近代音楽の歴史を語る上で欠かすことのできない、伝統のあるホールである日比谷公会堂で開催することにより、日本近代音楽館による日本音楽界への多大な貢献に対してオマージュを捧げます。どうぞご期待下さい。