この公演について

公演ダイジェスト動画(約7分)はこちらをクリック(撮影・編集:石崎俊一)

オペラ『ニホンザル・スキトオリメ』は、国内外でその作品がたびたび演奏される日本を代表する現代作曲家、間宮芳生(1929-)が、詩人・木島始(1928-2004)との深い信頼関係に基づく共同作業を経て生み出した、日本オペラ史の金字塔ともいえる壮大な作品です。声、特に日本語による音楽表現を一貫して追求し続け、いまなお創作力旺盛な間宮芳生自身が「大切な作品」と位置付けるのがこのオペラです。
物語は、滅亡の危機にさらされているニホンザル一族の王国が舞台。大編成のオーケストラに、パイプオルガンや、リュート、リコーダー、バグパイプなど、さまざまな楽器が加わって、時代を超えた物語を歌い上げる破格のスケールゆえに、舞台初演(1966年)以来長らく再演の機会がありませんでした。この作品が、2019年1月27日、オーケストラ・ニッポニカ第34回演奏会《間宮芳生90歳記念》において53年ぶりに再演されました。
さらにこの公演では、このオペラと共に演奏するための間宮芳生の新作「女王ざるの間奏曲」(2018/オーケストラ・ニッポニカ委嘱作品)の世界初演も行われました。

本公演の指揮者、野平一郎(オーケストラ・ニッポニカ ミュージック・アドヴァイザー)が当日の公演プログラム冊子に寄せたメッセージをご紹介します。

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本公演によせて

野平一郎(オーケストラ・ニッポニカ ミュージック・アドヴァイザー)

間宮芳生先生の「ニホンザル・スキトオリメ」が音になる。これはおそらく私の世代の先生の弟子たちにとっては、ある種の「夢の実現」である。振り返ると、先生のオペラ作品は全部で5作。「昔噺人買太郎兵衛」(1959)は何度も再演され聴くことができたし、「鳴神」(1974)は先生のクラスにいた大学3年の時にリアルタイムで聴いている。「夜長姫と耳男」(1990)に至っては、稽古や舞台上でずっとピアノを弾いていた。「ポポイ」(2009)は先生から譲り受けた静岡音楽館AOI芸術監督の立場での委嘱。そしてこの「ポポイ」はまた、先生に東京シンフォニエッタのために書いていただいたピアノ協奏曲第4番「いまだ書かれざるオペラの情景」(1997)の現実化として実現した。従って唯一耳にしていないオペラ「ニホンザル・スキトオリメ」は、先生からその話を聞くたびに私の中で、いやおそらく当時先生の弟子だった人たちの中で、これは間宮先生の最高傑作であるという観念が出来上がり、年を経てさらにその観念は頭の中で増幅されて行った。それが、今なんと自分の目の前で現実に鳴っている、そして先生の真の傑作であることが理解できる… 感無量である。
〔オーケストラ・ニッポニカ第34回演奏会《間宮芳生90歳記念》(2019/1/27 すみだトリフォニーホール)公演プログラムより〕

オペラ『ニホンザル・スキトオリメ』の稽古場にて 間宮芳生と野平一郎 師弟(2018年11月撮影)